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「わかる」ために学習者用デジタル教科書を使おうとすると、あの手この手の様々なツールを盛り込みたくなります。でも、子供が「できる」ようになるために使うと考えると、シンプルでいい。「わかる」を目指す人が、学習者用デジタル教科書のシンプルなビューワーを見たら、簡素過ぎて驚くかも知れませんね。でも、「できる」を目指すなら、このぐらいでいい。デジタル教科書から文章や図をコピーしたり、自分の考えを書き込んだりするのが、主な用途ですから。志儀デジタル教科書に限らず、「できる」を目指すのであれば、デジタルコンテンツはシンプルであることが望ましいのですね。佐藤先生も子供も、シンプルなほうが使いやすい。テキストツールも、極論すればメモ帳みたいなものでいい。見映えに凝ることよりも、伝える内容を吟味することに時間をかけたほうがいいと、大人も考え方が変わっていった。子供もそうなると思います。志儀GIGA環境を使う目的を意識しながら、デジタルコンテンツを整備していくことが大切ですね。本日はありがとうございました。内田洋行教育総合研究所研究開発部次長志儀孝典1999年株式会社内田洋行入社。営業部門や企画部門等を経て2014年より教育総合研究所、2023年より現職教育デジタルコンテンツカタログ20249子供が使えるコンテンツの「選択肢」を増やしたいですね。で管理ができると思います。今後求められるデジタルコンテンツの条件は?志儀今後デジタルコンテンツはどうあるべきですか?AIドリルを使う学校も増えてきました。佐藤AIドリルを使うなら、データの解析も子供に取り組ませる必要があると思います。基礎基本の習得をAIドリルに、授業では習得した知識を生かして高次な資質能力の育成に取り組む、といったチャレンジも必要だと思われます。AIドリルでは、様々なデータが記録されます。勉強時間や正答率、以前との比較など、そのデータを子供自身に解析させ、自分の今後の学習に活かしてみるのです。今、データサイエンスがすごく注目されています。大学のデータサイエンス系学部も人気ですし、企業もデータサイエンスをビジネスに活かしています。子供のうちからデータサイエンスを経験しておくのは、必ずプラスになります。AIドリルに限らず、いろんな場面でデータサイエンスができると思います。子供は柔軟に発想しますから、体育で運動する様子を撮影して、勝敗結果と合わせて分析するなど、子供に委ねれば面白いアイデアがたくさん出てくると思いますよ。志儀令和6年度から、学習者用デジタル教科書の導入も始まります。佐藤学習者用デジタル教科書も、「わかる」ために使うか、「できる」ようになるために使うかで、求める姿が変わります。信州大学教育学部准教授佐藤和紀氏1980年長野県生まれ。東北大学大学院情報科学研究科を修了、博士(情報科学)。東京都内の公立小学校教諭を経て、2017年から研究の道へ。2022年より現職。文部科学省「リーディングDXスクール事業指定箇所選定委員会」委員長を務めるなど、国の教育政策にも深く関わる。小学校教員時代には,1人1台端末を活用して子供が主体的に学習する授業や,情報活用能力やメディア・リテラシーの育成に努める。学習の基盤としての情報活用能力の育成や,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に取り組んでいくための授業設計や工夫・手立てについて,小学校教師が基盤としている教育方法,教育技術,学級経営といった能力を踏まえて研究や学校現場の支援に取り組んでいる。